診療のご案内

女性外来

体外受精・胚移植(IVF-ET)

体外受精・胚移植について、適応(どんな対象に治療を行うか)、方法、妊娠率、費用、リスクなどを順に説明いたします。
「多胎妊娠のリスクと予防」も必ずご確認ください。また、顕微授精(ICSI)、胚の凍結保存と移植については、それぞれのページもご覧ください。

多胎妊娠のリスクと予防 顕微授精(ICSI)
胚凍結法

1. 適応(対象)

体外受精・胚移植を受ける方は婚姻しており、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐え得る状態にあることが必要です。
体外受精・胚移植は、「これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがないと判断されるもの、および本法を施行することが被実施者またはその出生児に有益であると判断されるもの(日本産科婦人科学会 会告1983年)」を適応とします。具体的には、卵管性不妊症、乏精子症、免疫性不妊症、原因不明不妊などが適応となりますが、ほかの治療法で妊娠可能なのに体外受精を安易に行うことのないように慎重な配慮が必要です。
「卵管性不妊症」で本法の対象となるものは、薬物療法や卵管形成術で妊娠不可能と判断される場合です。これらの中には、実際に卵管形成術を行っても、妊娠しなかった場合と、子宮卵管造影法や腹腔鏡などの検査で、ほかの方法では妊娠が成立する可能性がないと診断された場合があります。
「乏精子症」に対しては、ご主人に対するホルモン療法・精索静脈瘤手術・配偶者間人工授精・優良精子選別濃縮人工授精法などの一般的な治療によっても妊娠しなかった場合に、体外受精の適応となります。
「免疫性不妊」並びに「原因不明不妊症」も体外受精の適応となります。

2. 方法

体外受精・胚移植は以下の7つで構成されています。それぞれの説明をします。

(1) 過排卵刺激について

通常の月経周期では、一度に排卵される卵子の数は1個です。しかし、体外受精では妊娠率を上げるために過排卵刺激を行い複数個の卵子を採取します。

① 排卵の仕組み

一生の間に排卵する卵子のすべては、その女性が生まれる前に卵巣に出現し未熟な状態で眠っています。通常は、毎月1個だけが成熟し排卵します。卵子の成熟・排卵をコントロールしているのが、脳下垂体から分泌されるFSHとLHというホルモンです。FSHは卵子を成熟させ、LHは卵子成熟の最終段階を促して排卵させる作用があります。FSHを注射することで、成熟する卵子の数を増やすことができます。FSH作用を持つ薬剤がhMGで、LH作用を持つ薬剤がhCGです。
Gn-RH agonistというホルモンは視床下部から分泌され、下垂体からのFSHやLHの分泌をコントロールしています。これをしばらく投与すると、本来下垂体から分泌されるFSHやLHを抑制し、質がそろった成熟卵子を採取することができます。
Gn-RH antagonistは、投与後すぐにFSHやLHを抑制する薬剤で、同様に質がそろった成熟卵子を採取することができます。

② 使用する薬剤
hMG製剤 ゴナピュール、hMGフジ、hMGテイゾー
フォリスチム、ゴナールエフ など
hCG製剤 ゴナトロピン、hCGテイゾー など
Gn-RH agonist製剤 スペレキュア、ナサニール
Gn-RH antagonist製剤 セトロタイド、ガニレスト
③ 実際の投与スケジュール
1. GnRH agonist 法
(ア) Gn-RH agonist:予定採卵周期の前周期の高温相3日目~中期ごろより開始し、採卵2日前まで使用します。スプレキュアを両方の鼻に1日3回点鼻します。この薬剤は妊娠中には使用できないので、採卵周期の前の周期は避妊をします。
(イ) hMG製剤を、採卵予定周期の月経3日目以降から毎日投与します。一旦投与し始めると、採卵可能となるまで毎日投与が必要です。投与日数は個人差があります。
(ウ) 卵胞が十分成熟してからhCG製剤を投与すると、卵子がさらに成熟します。採卵2日前の午後9時にhCGを投与し、その36時間後に採卵します。またhCGは着床を助ける作用もあるので、採卵後も隔日で投与することがあります。
(エ)

過排卵刺激中の検査

十分に成熟した卵子でなければ受精・分割をしないため、いつ採卵するかが重要です。卵子が入っている卵胞は発育して大きくなると、代表的な女性ホルモンであるエストロゲンを分泌します。そして、エストロゲンの血中濃度は成熟の目安になります。採血でエストロゲン濃度を測定することと、超音波検査で卵胞の大きさから、いつ採卵するかを決めます。

2. Gn-RH antagonist 法

hMG製剤の投与を開始して、ある程度卵胞が大きくなってから、スプレキュアの代わりにセトロタイドという薬をhCG投与の日まで毎日注射します。hMG製剤やhCG製剤の投与、過排卵刺激中の検査は、GnRHagonist法と同じです。

(2) 採卵

経腟超音波で観察しながら腟壁から卵胞を穿刺し、卵胞内に充満している卵胞液を吸引して回収すると、卵胞液と一緒に卵子が採取できます。静脈麻酔および吸入麻酔で行います。

(3) 媒精

従来媒精法:卵子の入ったシャーレ(皿)に、適度な濃度の精子を加えます。運動性が良好な精子は、自ら卵子に接触し受精します。良好な精子と卵子でないと受精しない場合があります。

顕微授精法:従来媒精法で受精しない場合や精液所見が不良な場合に行われます。顕微授精法にも数種類ありますが、細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection: ICSI)が一般的です。これは1匹の精子を細いガラスの針で卵子内に注入する方法です。顕微授精(ICSI)も参照してください。

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(4) 培養

適切な培養液の中で、卵子は受精して受精卵(胚)となり、さらに細胞分裂を繰り返して発育します。

(5) 胚移植(embryo transfer ET)

胚は受精後2日目には4個の細胞(4細胞期胚)になります。正常な胚はさらに分裂して、8細胞、16細胞とその細胞数を増やしていきます。受精後2~4日目に、胚を子宮に戻します。 移植する胚の数は原則的には1個(多くても2個)です。これは母児のリスクが高い多胎妊娠を減らすためです。多胎妊娠のリスクと予防も参照してください。

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(6) 余剰胚の凍結保存

良好な胚が数多くできた場合、移植しなかった胚(余剰胚)が余ります。良好な余剰胚は凍結保存が可能です。もしも、新鮮胚移植で妊娠しなかった場合、胚を融解して、違う月経周期に再度移植することができます。ただし、胚が良好でないと凍結できない場合があります。

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当センターの倫理委員会により凍結期間に関し以下の規定があります。

凍結期間は1年間です。1年を超えて保存する場合は、毎年、来院して更新手続きが必要です。
凍結保存や凍結保存中止の際には同意書が必要です。
凍結受精卵を残して来院されない場合は、凍結期間が終了した時点で、同意が得られなくても凍結保存を中止します。

(7) 黄体補充療法

移植した胚が子宮内膜に着床するためには、プロゲステロンというホルモンが必要です。これは排卵後の卵巣から分泌されますが、薬で補うことで、よりよい条件にすることができます。この目的で使用される薬剤がhCG(注射)とプロゲステロン(注射と腟座薬)です。

3. 妊娠率・限界

当センターの体外受精・胚移植の妊娠率は、採卵あたり17%、移植周期あたり23%です(2005年、日本の平均16.8%)。しかし妊娠率は不妊原因や年齢によって大きく異なり、例えば、35歳以下の卵管性不妊では約3~4割と高いのですが、重症の男性不妊では約1割です。

4. リスク

(1) 採卵時出血
採卵時に腟内や腹腔内に出血します。ほとんどは自然に止まりますが、出血量が多いと入院が必要になったり、稀に開腹手術を要することがあります。
(2) 感染
採卵時、細菌が腹腔内や卵巣内に混入し、感染が起きて腹痛や発熱することがあります。感染を予防するために、採卵日より3日間抗生物質を内服しますが、感染が起きるとさらに長期間の投与や入院が必要になることがあります。稀に、開腹手術を要することもあります。
(3) 卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome OHSS)
hMGを使用し過排卵刺激を行うと、たくさんの卵胞が発育し卵巣が腫大することがあります。これは採卵によって一旦縮小しますが、再び卵巣が腫大することがあります。さらに腹水が貯留すると、腹満感・体重増加。尿量減少が出現します。これを卵巣過剰刺激症候群といいます。症状が軽い場合は、自宅で安静にするだけでよいのですが、重症の場合は入院や点滴などが必要です。月経が始まると軽快しますが、妊娠が成立すると重症化したり長期化することがあります。そこで、卵巣過剰刺激症候群が懸念される場合はすべての胚を凍結保存して、違う月経周期に移植することもあります。
(4) 流産、異所性妊娠
IVFによる妊娠では流産率が、自然妊娠(15%)に比して高く、21~26%です。また、異所性妊娠の率も約3%(自然妊娠では1%未満)と高率です。
(5) そのほか
ART(生殖補助医療:体外受精・顕微授精などの総称)によって出生した子に、ある特定の疾患の頻度が高いことは確認されていませんが、さまざまな疾患への罹患率が一般集団よりもごくわずかに高率であることが最近報告されています。
世界で最初にARTで児が誕生してから、まだ30~40年です。したがって、例えば、ARTによって出生した人の生活習慣病などの罹患率、平均寿命、次世代への影響の有無などの情報が得られるまでにはかなりの年月が必要です。そのほか、不明な点も多く残されています。

5. 費用

体外受精は健康保険の適応になりませんので、原則的に自費扱いになります。注射の回数によっても異なりますが、合計で約30~40万円ほどになります。

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6. 学会等への報告と個人情報について

体外受精・胚移植を行うすべての病院は、日本産科婦人科学会に報告する義務があります。報告の内容は、体外受精・胚移植の症例数、妊娠例数などで、氏名などの個人情報が報告されることは絶対にありません。
また、当センターとして上記のデータを研究に使う場合がありますが、この場合にも、氏名などの個人情報が明らかになることは絶対にありません。
特に体外受精・胚移植で妊娠された患者さまの妊娠経過および児の状態を集計しております。他院で出産する場合は、転院時に簡単な経過記入用紙をお渡しいたしますので出産後に送っていただきますようお願いいたします(その際も氏名などの個人情報が明らかになることはありません)。

7. 日本および世界における体外受精・胚移植の状況

体外受精・胚移植による誕生の第1号は1978年でイギリスです。日本では1983年に、最初の体外受精児が生まれています。2011年の時点で、全世界で400万人以上、日本でも20万人以上のART児が誕生しています。世界で初めての体外受精・胚移植を成功させたエドワーズ博士は、2010年にノーベル医学・生理学賞を授与されました。
最近のわが国のARTの進歩と普及は著しく、日本産科婦人科学会の2008年の統計では、1年間に日本で新鮮胚を用いた治療が約59,000周期、凍結胚を用いた治療が約60,000周期、顕微授精を用いた治療が約71,000周期で、合計では約190,000周期にARTが施行され、2万人超が出生しています。年間の分娩数は110万人ですから、およそ1.99%、50人に1人がARTによる妊娠であることになります。

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